乾飯|日本史用語集
乾飯の概要
蒸したご飯を干したもの。古代より日本の保存食として貯蔵用・携帯食とした。糒・干飯・餉(かれいい)とも言われる。
乾飯の解説
甑で蒸して作った強飯(こわいい)を水にさらし、天日に干して乾燥させた保存食。そのまま、水や湯につけて柔らかくして食した。
貯蔵用として利用される場合は、「糒」と書く。軍防令の規定では、兵士一人に付き糒6斗・塩2升を持参させ、行軍の備えとして貯蔵していた。倉庫令の規定では、稲や穀の貯蔵期間が9年なのに対し、糒は20年の貯蔵期間が規定されていた。保存がきくので、祭祀の供物としても利用された。
携行食としては「餉」(かれいい)とも書き、旅に出るときの携帯食や、行軍の際の兵糧食として用いられた。「伊勢物語」の九段(東下り)では、モデルと言われている在原業平とその友人が、旅先で残してきた妻子を思ってあふれた涙で餉がふやけた、という描写があり、乾飯が文学に出てくるシーンとして有名である。
余った米は乾飯として日常的に保存食としており、それを粗く引き割った粉が和菓子の原料にもなった。特にもち米を蒸したものを天日干しにした道明寺粉は、和菓子の原料としてよく知られている。伊達政宗が道明寺粉を参考にして開発した兵糧食も仙台糒と言って名産としてよく知られていた。