化学の基礎完成ってどこまで?分野ごとの勉強法や参考書の選び方は?ーインタビュー

大学受験の化学。理系の大学受験生はほぼ全員使う科目だ。「計算なのか暗記なのか分からない」と悪戦苦闘する受験生が多い中で、共通テスト・私立・国公立で化学を使う受験生がいち早く成功できるコツを、独学の受験生をオンラインでサポートしているというイクスタコーチの土井万智(どいまさと)に聞いてみた。


ーー化学を出来るだけ簡単に入試レベルまで上げたいのですが、おすすめ方法はありますか?

土井化学って理論分野と無機分野と有機分野と高分子分野に分かれていて、それぞれの範囲で入試で問われる力が全然違うんですよね。カレーに入っている肉と福神漬けくらい違います。


ーーいきなり例えが分からないんですけど…

土井理論分野の入試問題ではほぼ計算力が求められるのに対して、無機分野ではほぼ物質の暗記力が試されるんです。例えば数学や物理はどんな大問でもほぼ計算で、日本史や世界史はどんな大問でもほぼ暗記力が問われるのと比べると、化学は大問によって脳の使い方が全然違うんです。そこを把握していれば勉強しやすいんですけどそれを知らずに成り行きで参考書を頭から進めていると途中で「ん?どこに向かえばいいの?」ってなっちゃう科目なんですね。


ーー理論分野は計算が重要で無機分野は暗記が重要なことは分かりました。他の分野で大事なことは変わりますか?

土井理論と無機の他には有機分野と高分子分野があります。有機分野は知識量が多いという点では無機分野とほぼ同じですが、難関大学ではそれらの知識を応用して「未知の有機物A」が何かをあの手この手使って推測する構造決定・構造推定問題が頻出になり、この問題への対策が重要になります。高分子分野は、有機分野の知識を使う分野で、暗記の割合が多いという意味では無機分野と似ている分野です。


ーーどの分野から始めればいいのでしょうか。

土井まずは理論分野から始めます。理論分野で扱う、反応の仕組みやメカニズムを無機以降でも使うので、まずは理論分野の典型的な計算問題を解けるようにすることが最重要です。入試の本番でも化学の配点のうち50~60%は理論分野から出題されることが分かっています。


ーー無機以降でも使うし実際に配点割合も高いのが理論なんですね。

土井理論は途中から一気に難しくなります。前半は化学基礎と呼ばれる分野で、計算の過程もそれほど複雑にはならずに理解することも計算することも難しくはないのですが、「酸・塩基」という分野から一気に難しくなっていきます。中和や電池、酸化還元あたりで本格的に概念理解も計算過程も一気に複雑になっていくんです。


ーーどんな教材を使えばいいですか?

土井出来るだけ言葉やイメージが充実している教材を何度も繰り返すのがおすすめです。教科書や問題集だけだと、「どんな考え方で反応させればいいのか」がぱっと見では分かりにくいことが多いので、学校や予備校の授業の記憶がない場合には解説が丁寧な参考書はありますか?


ーーおすすめの参考書はありますか?

土井化学がよほど得意という場合以外は学研の「宇宙一わかりやすい」シリーズがおすすめです。特に電離度の仕組みや電気分解の仕組みはイメージしにくく、他の教材では時系列での説明が省略されている場合があるので、その点をしっかり学び直す意味でも「宇宙一わかりやすい」シリーズは丁寧に言語化されていておすすめです。その他にも「ゼロから劇的にわかる」シリーズや「おもしろいほどわかる」シリーズも良いので、ぜひ書店で実際に手にとって自分の感性に合うものを選ぶことをおすすめします。


ーーゼロから勉強する時には「宇宙一わかりやすい」シリーズがおすすめなのは分かりました。難関大学の合格を目指す上で、他に揃えておくべき参考書はどのようなものがありますか?

土井化学の参考書は役割ごとに4つのカテゴリに分かれていて、それぞれ1つずつ揃えて欲しいです。1つ目のカテゴリは先ほどご紹介した「宇宙一」などが該当する市販の講義解説系のカテゴリ。受験生目線で言語化されている教材なので、ぜひ1シリーズは揃えてください。2つ目のカテゴリは網羅系問題集。セミナー化学やリードα、実践アクセスシリーズなど学校で配られる教材です。


ーーうちの高校では理科はどれもセミナーが配られていました。

土井セミナーが一番有名かもしれませんね。出版社が違うだけで、セミナーもリードαも実践アクセスも、エクセルも問題構成や役割、ページ数はほぼ同じです。学校で配られたものを使えば大丈夫です。もし市販のものがよければ「化学の新標準演習」という参考書がほぼ同じ難易度、問題構成の参考書です。網羅系の問題集は必ず1冊揃えることをおすすめしています。3つ目のカテゴリは教科書です。これも学校で配られたもので構いません。網羅系問題集や過去問を解く時に分からない仕組みやメカニズムが出てきた時に教科書に戻ってメカニズムや物質を確認します。


ーー教科書は講義解説系とは違うんですか?

土井カレーで例えると教科書は食堂のカレーという感じ。講義解説系はインドカレーという感じかな?


ーーまたカレーが出てきた

土井講義解説系は、分野に絞って見ればとても分かりやすく解説されていて重宝するんですけど、全分野を網羅しているわけではないので載っていない仕組みや物質もあるんですね。分かりやすく言語化するには文字数が必要で、その結果、ページ数の限界で載せられない内容もあるんでしょう。その点教科書にはほぼ全ての仕組み、物質が載っているので「ここに戻ってくれば良い」という安心感があります。ただ、教科書は導入的な文章が少ないので、独学で一発目から理解するのは説明が少ないんですよね。


ーーでは、化学の教材としては講義解説系と網羅系問題集と教科書の3種類があればいいんですね。

土井その通りです。旧帝大や早慶の難関大学のレベルを目指さない場合にはその3種類でOKです。旧帝大や早慶を目指す場合にはその3種類加えて難関問題集を加えます。


ーー重要問題集…ですか?

土井まさにその通り!難関大学を目指す場合には難関問題集で入試レベルの演習をします。受験学年の8月以降にはこの難関問題集を始めて過去問に繋げたいんです。


ーー難関問題集は他にどのようなものがありますか?

土井「化学の新演習」や「鎌田の化学問題集」も難関問題集のカテゴリです。網羅系問題集が終わったら難関問題集を始めましょう。

ーー網羅系問題集を全て終わらせないと難関問題集は始めるべきではないのでしょうか。

土井いい質問ですね。実は意見が分かれるところなんです。網羅系問題集の基本問題までを終わらせてそこから難関問題集に進んでちゃんと結果が出る人もいるし、やっぱり網羅系問題集は全ての問題をしっかり終わらせてから難関問題集に進むべきだという人もいるし。


ーー網羅系問題集の発展・応用問題でも結構難しいようなイメージがありました。

土井網羅系問題集の一番難しい問題と、例えば重要問題集のA問題はレベル的に被っている問題があるのは確かです。もちろん理想は両方ちゃんとやることですが、完璧にこなすには時間が足りないって人がほとんどなので、その場合には問題と解いた感触をしっかり見極めてご自身で判断してみてください。


ーー化学の基礎完成はどこまででしょうか。レベルを測る方法はありますか?

土井大学受験のレベルの基礎を測る方法は2つあります。1つ目はセンター試験の過去問で大問ごとに60%程度得点できているかどうかです。もう1つは網羅系問題集の基本問題までを80%程度即答できるレベルになっているか。この2つが安定するようになっていれば基礎は良い感じです。実際に偏差値55程度の大学であれば合格最低点を取れるようになっているはずですし、あと半年ほどあれば旧帝大・早慶レベルも合格がしっかりと目指せるレベルになっています。


ーー最後に伝えたいことはありますか?

土井市販の参考書に関する情報は数多くありますが、役割ごとに揃えることができているかをチェックしてみることですね。あとは、参考書選びはやっぱり自分の感性が大事です。「なんかやる気になる」ってことが一番大事だと思います。1冊完成させることができれば、そこから足りないことはあとでなんとでもなるので、ガシガシ勉強が進む未来を描ける、そんなやる気になる参考書を選ぶことがいいんじゃないでしょうか。

参考書を決めたら、あとはそれを徹底的に終わらせる。特に国公立理系は科目も多いし教材も多いので、毎週のタスク管理が本当に大変です。タスク管理とやる気管理で差がついてしまうくらい。僕は普段、大学受験生の年間計画と週のタスク管理を専門でサポートしています。週に1回60-75分の面談で、次の週までの勉強時間を出して、年間計画から優先度をしっかり決めて「今週は何をどこまでやり切るべきか」を決めるお手伝いをしています。受験勉強を始めて2-3ヶ月経ってもいまいちやる気モードに入らない場合はぜひお問い合わせください。

戦略不足と計画不足で負けるなんて悔しくないですか?正しい戦略と間に合う計画を本気で教えます!


他にも化学について、ゼロから難関大学に合格するまでの勉強法やおすすめの参考書を詳細にご紹介している記事もあります。ぜひこちらも参考になさってください。

【化学】1年で難関大に合格するレベル別参考書と勉強法とは?わかりやすく徹底解説!


イクスタとは?

イクスタとは土井万智(どいまさと)が運営する、はじめての大学受験を成功させるためのプラットフォームです。Webの記事、Youtube動画、書籍、オンラインコーチングで独学の受験生を支援します。


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オンラインの面談で受験生の独学を支援。東京都や神奈川県、埼玉県、千葉県など首都圏を中心に、愛知県や兵庫県など、北海道から沖縄まで全国の受験生をオンラインの面談で志望校合格へ送り出している。ある年は90%以上の受験生がMARCH以上に進学。

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