生物の基礎完成ってどこまで?分野ごとの勉強法や参考書の選び方は?ーインタビュー
大学受験の生物。医学部系や生物系・農学部系志望の受験生中心に選択する科目だ。
「生物は暗記すべき量が多い」「化学よりも情報が少ない」など、行き詰まりを感じやすい中で、共通テスト・私立大学・国公立大学で生物を使う受験生が成功するためのコツはあるのだろうか。
独学の大学入学後、10年以上独学の大学受験を研究しているイクスタ代表の土井万智(どいまさと)に聞いてみた。
ーー大学受験で生物を使う受験生が効率的に勉強するために外せない視点はありますか?
土井:生物は共通テスト、私立大学、国公立大学それぞれ出題形式や求められる力がはっきりと違うのが特徴の科目です。自分がどの形式を受けるかを最初に決めてから参考書を選ぶのが肝心な科目ですね。
ーー共通テスト、私立大学、国公立大学の形式はどれくらい違うんですか?
土井:それぞれ全く違うと言ってもいいかもしれません。(画像)生物って知識量が多いイメージがある人もいるかもしれません。例えば私立大学であれば確かに知識問題がたくさん出題されるんですが、一方で共通テストは読解の要素が非常に強いのが特徴です。
ーー生物は共通テストになってから平均点が安定していない印象があります。
土井:そうですね。平均点が大暴落した年もありあれは事件でした。共通テストではもちろん基礎的な知識は定着していることが大事なんですが、配点の半分程度は読解問題で、この読解問題はいくら知識があっても解けない思考力を試すタイプの問題なんです。
ーー読解問題を安定させるためのコツはあるんですか?
土井:読解問題は、物事の関係性を見抜く力が求められます。因果関係、相関関係、時間の経過など2つの物事の関係性を把握できるかという力が求められるんですね。こうしたタイプの問題は、共通テスト形式の問題集で慣れることができます。ただ、これらの対策は、思考力を直接鍛えるというよりは慣れることが目的なので、意外と効果がないかもしれません。
ーー対策が難しいんですね。
土井:センター試験から共通テストに変わった時の趣旨が「その科目を勉強しているだけではつけることができない力を測る」というところにあったので、生物だけを勉強していても難しいかもしれません。数学や化学も似たような傾向がはっきりと出やすいです。
普段から考え事をしていたり推理したりする習慣がある人が得点しやすい傾向があります。
ーーいずれにしても基礎は大事なんですね。
土井:共通テストでも私立でも国公立でも、やっぱり各分野の仕組みやメカニズムを理解して、物質や部位の名前や性質を覚えていくことが軸になりますよ。
ーー私立大学の傾向はありますか?
土井:私立大学は知識系の問題が多いです。物質や部位の名前を単語で記述する問題だったり、選択肢の中から正しい記述を選ぶ正誤問題が多く出題されます。配点のうち6〜7割はこうした知識問題から出題されます。
ーー国公立大学はどうでしょうか。
土井:国公立大学はさまざまな出題形式がバランスよく出題されるのが特徴です。国公立大学と難関の私立医学部は出題形式が似ています。単語を記述したり選択肢の中から正しいものを選ぶ知識問題と、反応の結果を計算して求める計算問題、物質や機能について記述する記述問題、この3つがバランスよく出題されるのが特徴です。
ーー記述問題が出るのは国公立ならではですよね。
土井:実は記述問題にも2つの種類があって、物質や機能について30〜60文字で記述する短文記述問題と、実験結果やその背景を100文字以上で記述する長文記述問題に分かれます。傾向としては偏差値63程度以上のいわゆる難関国公立大学は100文字以上の長文記述問題が多く出題されることが多いです。
ーー確かに共通テストと私立大学と国公立大学、それぞれ傾向が違うんですね。
土井:例えば数学や物理ではどの試験形式でも求められる力は似ていてここまで大きな違いないので、生物独特の特徴ですね。なので、生物をどの試験で使うかによって最初から使う教材も全然違うんです。有名な参考書はあるとして、その参考書を使うかどうかは自分の志望校次第になります。
ーーどの参考書とか問題集を使えばいいんでしょうか。
土井:ではまず生物の教材の4つのカテゴリについて触れていきましょう。生物の教材はその役割によって4種類に分かれています。1つ目は教科書系です。学校で配られる教科書です。学習指導要領に沿って無駄なく記載されています。もし教科書を持っていなければ数研出版の「チャート式」、シグマの「理解しやすい生物」、学研の「よくわかる生物」を選べばいいでしょう。
ーー生物はセミナーが有名ですよね。
土井:2つ目のカテゴリが網羅系問題集です。セミナー生物もこのカテゴリに入ります。他にもリードα、実践アクセス、エクセルなどが網羅系問題集です。教科書の内容に沿っている教材です。問題の形式が幅広く問題数も多いです。一問一答形式の知識確認、基礎レベルの基本問題、大学入試レベルの発展・応用問題に分かれています。
ーー資料集もありますよね。
土井:資料集も学校で配られますね。図とかビジュアルで各分野の仕組みやメカニズムが解説されているものです。生物は単語だけで覚えようとすると分量が多すぎてキャパオーバーになりがちなんですよね。ビジュアルを関連させた方が忘れにくくなるので序盤から資料集を同時並行で使うのがおすすめです。
ーー他にはどのような種類がありますか?
土井:あとは市販の講義解説系の参考書があります。生物の各分野を予備校の授業形式で、とんでもない分量で解説している参考書です。
ーー講義解説系の参考書の特徴はありますか?
土井:教科書と資料集だけだと分かりにくい場合に使いたい参考書です。教科書だけだとどうしても仕組みやメカニズムの説明が省略されてしまう場合があるので、徹底的に詳しく勉強する場合におすすめです。この参考書を1ページ目からがっつり読んでいくのもいいですが、分量がとても多いので問題を解きながら辞書的に使っていくのもいいでしょう。
ーー問題集は網羅系問題集だけでいいんでしょうか。
土井:セミナーやリードαなどの網羅系問題集を使っていけば幅広いレベルに対応できますが、最難関レベルを受験する場合には難関レベルの問題集を使いたいです。「生物重要問題集」や「大森徹の最強問題集」が難関レベルの問題集で、東大・京大・東工大、国公立医学部系を受験する場合には網羅系問題集を終わらせたあとにこれらの問題集を解いて過去問に備えます。
ーーこれらの教材を使った中での基礎までの基準はありますか?
土井:一番分かりやすい基準は、網羅系問題集の基本問題までが8割解けるようになることです。教科書と資料集と網羅系問題集を使って何度も復習するのが近道です。生物は単語の知識量が多いんですが、必ず元となる仕組みやメカニズム全体から理解するようにすると、それぞれの知識を関連させることができてより忘れにくくなるのでおすすめです。
ーーとにかく知識の量が多い印象があります。
土井:理系科目の中で暗記量はダントツで多いです。化学は無機、有機範囲で知識量がありますが数学や物理は知識量が少ないです。それと比べると生物は非常に知識量、暗記すべき量が非常に多くて苦戦します。特に難関私立大学や難関国公立大学の合格点を取るためには非常に多くの知識が必要になります。
ーー苦戦しないためにできるおすすめの方法はありますか?
土井:一問一答形式で覚えようとしても限界があるので、仕組みやメカニズムから関連させるのがおすすめです。細胞や代謝の仕組みを丸ごと覚えるために1つ1つ絵を描いて理解するのが良いでしょう。
そのほか、生物を独学で難関大学に合格するための勉強法や参考書を詳しくご紹介しています。
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