独学で物理の本質をつかむ最良の書。漆原の物理をわかりやすく徹底解説!
「物理の参考書史上、最も日本語がぎっしり詰まったクレイジーな参考書」
私は参考書は日本語が多ければ多いほど良いと思っています。相談を受けた時にもそうおすすめすることにしています。日本語が多いほどモノゴトを立体的にイメージできるようになるからです。
最短で簡潔に寄り道なく一直線な参考書もあれば、行ったり来たり、時には前のページで扱ったことを復習しながら、立体的に進む参考書と分かれているんです。どちらの方がいいということではなく役割が違うんです。
この参考書は物理の中でも貴重な、行ったり来たり寄り道しながら複線的に物理を理解できるようになるための参考書です。もちろん、大学受験レベルに対応しています。
今回はこんな漆原の物理を解体して、どんな受験生がいつ使うべき、私なりの視点をご提案していきます。
漆原の物理は、市販の物理の参考書で最もおすすめなものの1つです。
目次:
物理はもっとも我流の勉強法が通用しない科目
真理を掴めばなんでも解ける
物理はなんでこうも面倒で伸びにくい科目なのか
漆原は徹底的に言語化、分解している参考書
漆原の物理はどんなレベル?どんな志望校向け?
物理はもっとも我流の勉強法が通用しない科目
物理は得意不得意が本当にはっきりと分かれる教科です。崖さえ越えれば最強の力が手に入る。ただ、崖を超えるまでは右往左往して苦しみます。独学しにくい科目でもあるんです。
「いくつかの公式を使えば解けるんだろうけど、毎回解けそうで解けない」
「この問題にはどの公式を使えばいいのだろうか、が分からない」
「公式は何をどうするものか」が理解できてないからなんですが、ただ、それさえ分かっちゃえば一気に伸びていく科目です。真理なるものがある科目なんです。
ここを掴むまでは、教科書、エッセンス、セミナー、解説見てみても「なんそれー!」と頭を抱えてしまいます。
真理を掴めばなんでも解ける
去年も1人だけいました、真理を掴んじゃった受験生。彼女はこの参考書を使っているわけではありませんでしたが、ある日ピーンと力学の真理に触れてしまいました。
彼女はMARCH志望でしたが、ある日力学の真理に到達してしまい、そこから旧帝大の物理の力学でも70%程度点数を取れるようになってしまいました。本人曰く、「ある瞬間全てが繋がった感覚」になったそうです。力学を始めて4ヶ月くらいは格闘して何度も何度も考えて考えてを繰り返して突然繋がる習慣が訪れた。
正直なところ、この力学の真理を掴むことは誰にでも出来るとは言えませんが、このエピソードから物理という科目の特殊性を感じることができるのではないでしょうか。
物理は解説をパターンで暗記するのではなく、理解しなければならない。
「よく分からないけどこの問題はとりあえず暗記するか」は絶対ダメな科目です。この考え方で通用する科目もあるんですけどね、こと物理に関してはずっと足踏みすることになってしまいます。
物理はなんでこうも面倒で伸びにくい科目なのか
物理の先生、説明がわかりにくい人が多いです。特に学校の先生は。なんでこうなるのかをもっと詳しく教えて欲しいですよね。でも学校の先生は変えることができないからしょうがない。そこで自分で分からないものを克服するために勉強していきます。ではどうやって勉強していけばいいのか。
分からなければ「言語化」これにつきます。
物理の解説を読んでいると毎回こうなりませんか。
「ma=-mgsinθ この記号は何を表しているんだろうか?」
物理はそもそも概念的な科目なので、イメージしにくいんです。これはしょうがない。
もし分からなかったら、そもそもそれは何を示しているものだったのか毎回戻って戻って確認しましょう。忘れるのは仕方ないです。分からなかったら分からないことを飛ばさないで、毎回丁寧に戻りましょう。これこそが近道です。
例えば英語の長文だったら、例えば分からない単語があっても読み飛ばしてもなんとかなる場合がありますが、物理はそうはいかないんです。一段分からないとそれ以上登っていけないんです。
「なんでこの問題にはこの公式を当てはめるのか」
物理の先生とか物理の参考書を書いている人って、物理が得意すぎるからその公式を当てはめるのは当然のこととして進んでしまうわけです。
そうするとこちらとしてはその問題は解説通り解けたとしても、次に似たような問題を解く時に、どの公式を使うのかその理由を分かっていないといけないわけですね。
(先生視点じゃなくて受験生視点で書かれている参考書は2024年現在でもそれほど多くはないのが残念なところ...)
漆原は徹底的に言語化、分解している参考書
物理を勉強していると、何が分からないかが分からないことが勉強そのものの課題になってしまうので、そんな時はとにかく書くんです。何を分かっていて何を分かっていないかを書いて整理する。
面倒だけど書く。書くことで初めて、何を分かっているか、何をわかっていないかを整理できます。
僕も文章を書いている時はそうです。書いてみて初めて整理できる。頭の中で想像しているだけだと同時に1つか2つのことしか考えられない。だからこそ、毎回面倒ですが、今の時点で何は分かっているのか、何は分かっていないのかを書き出します。
この漆原の物理は、物理の仕組みと問題を解くための考え方を徹底して日本語で書いてあるので、じっくりと家を建てるように物理の実力を着々と積み上げることができる参考書です。たくさん日本語が書いてあるので、どこで詰まっているかも丁寧に確認できるんです。
物理は他にも有名な参考書がいくつもありますね。毎年受験生が使っているのは、物理のエッセンスやセミナー物理、良問の風、名問の森など。いくつも良い参考書はありますが、それぞれ役割が違うんです。
物理の大抵の参考書は解説が直線的です。「ある程度基礎はわかっているよね」前提で、最短距離の解説です。これが悪いと言いたいわけではないんです。あくまで役割の違い。本を出版しようとすると、ページ数って意外と制約になるんです。限られたページ数で問題をたくさん載せようとすると解説は最短距離にせざるを得ない。
演習の問題集として出すものは、解説は必要最小限で、いろんな種類の問題を掲載した方が価値が高いという考え方もできます。分かっている人は最短距離でも「ああそれね」でピンとくる。むしろ無駄がなくて良い。
一方でそうした問題集は、実力が足りていないとちょっと(というかだいぶ)辛いんです。「なんでそうなるの」という最初の発想のとっかかりを掴むがないと解き始められないわけです。
直線的ではなく、一歩進んで一歩下がるを繰り返しながらじっくり理解しながら漏れなくやっていく。
物理と数学(と理論化学)はこうした進み方の方が、深く理解できてそれがそのまま大学入試で問題を解くための実力になるんです。
受験生は大抵学校の授業は覚えていないから(いいんですよ、みんなそうなんですから)、これくらい丁寧にやった方がいいのです。
受験生の中には「自分はそこそこ進学校だし」って、最初からちょっと難しめの参考書から始める受験生がいます。このプライドや意地は邪魔になってしまうことがあるんですね。意地を張らずに今の自分の実力を冷静に見つめて、共テ60点以下ならこの漆原からやる。そうおすすめしたい僕は。
この漆原を始めたら、完璧にして卒業するまでは、何度も何度も同じところ戻って、一言一句覚えてしまうまで繰り返すことをおすすめします。英語の単語とか無機化学とかは長期間のスパンを見越して何度も繰り返して長期記憶に押し込むことが効率的なんですが、物理は一行一行論理の繋がりを理解しながらじっくりと進んだ方がかえって効率的です。
公式や問題の解き方を理解していることが必要不可欠なわけです。
漆原の物理はどんなレベル?どんな志望校向け?
この漆原の物理は、大学受験としての物理を初めて本格的に勉強し始めるところから、センター過去問や共通テストレベルで60%程度得点できるようになるまでの受験生が使うべき参考書です。初期のメインの教材にしたいです。
例えば、富士山でいうと5合目まで登るための参考書です。富士山は5合目からが本格的な登山。本格的な登山(入試問題)を始める前に、しっかりと登り始めるための土台を作る段階でメインにすべき教材です。
この参考書だけで合格できる難関大学はありませんが、どの受験生にとっても不可欠な段階です。
毎年の受験生と話している感じ、正直なところ偏差値63以上の高校の定期テストで毎回トップ10%以内に入っているような真面目な高校生以外は、全員このレベルから始めた方がかえって近道なのでは、と率直に感じます。
他のこのレベルの参考書をご紹介しておきましょう。同じレベルでおすすめのものは3つほどしかなくて、この漆原の物理と「宇宙一わかりやすい物理」と「橋元流物理の大原則」です。
文章で勉強するならこの漆原の物理がおすすめ。図やイメージで勉強するなら「宇宙一わかりやすい物理」がおすすめです。ぜひご自分で見てみて選ぶことをおすすめします。
偏差値50から70までどんな志望校にもおすすめ
この参考書を使うのが向いている志望校は、言ってしまえば全ての大学です。志望校ではなくあなたの今の理解と実力に応じたものを使うべきです。具体的には、センター過去問、共通テストで60点以下なら全員が対象だと言って差し支えないです。富士山の5合目に到達していなければ、5合目以降に登っていくために使って欲しい参考書。
いつ使えばいい?スケジュールは?
物理の本格的な勉強を始めた最初の段階から使い始めるのがおすすめです。
物理は数学IAIIBCのセンター過去問・共通テストレベルで60点を取れるようになってから始めるのがおすすめです。二次関数や三角関数、ベクトルなどが標準レベルまで到達できるまではそちらに時間を投資しましょう。
漆原は3冊で900ページです。
1冊300ページなので、1周目20時間程度、2周目12時間程度。3周目6時間程度。
3冊を3周するのに60〜100時間程度は想定しておきましょう!
毎日1時間勉強したとして2〜3ヶ月かかる計算になります。ボリュームは大きいですが、独学でゼロから始めることを考えたらこれくらいは妥当な範囲内だと覚悟しておいた方がいいかもですね。
まず力学編を完璧にします。もう力学編は卒業できる、そう思えるようになった段階から電磁気に移ります。何周すればいいというのはなく、全部のチェック問題を他人に説明できるくらい理解し切った段階までは使い続ける前提で進めていきましょう。
漆原のあとは何を使えばいい?
イクスタでは、漆原のレベルは星2.5までと評価しています。
おすすめのルートはいくつかあるのでそれぞれご紹介しますね。
最もおすすめなのは、漆原の次のレベルとして網羅系問題集(セミナー・リードα・アクセス・エクセルなど)の基本問題を網羅することです。漆原で言語的に理解して現象もイメージした上で、典型的な問題の抜け漏れを埋めていきます。問題数も多く、基本までのレベルをしっかりと網羅することができます。正直なところ網羅系問題集の基本問題までは外せないかなあという感じです。基本問題の問題数が多く時間がかかってしまうのがネックですが、これ以上省略するとそれはそれでリスクになってしまうなあと思っています。
網羅系問題集の基本問題までを完璧にすれば共通テストで65〜70%程度は安定して取れるようになります。国公立大学の大問ごとの(1)は解けるようになっている問題もあるでしょう。MARCHであれば各大問の(2)まで解けるような問題もあるようなレベルです。
では網羅系問題集の基本問題を終わらせたら、次は何をやるか。この先には2つの選択肢があります。
1つめは網羅系問題集の発展・応用問題まで全てやり切る選択肢。
2つめは良問の風(河合塾)に進む選択肢。
どちらもおすすめですが、どちらかといえば良問の風をおすすめします。
偏差値63程度までの大学なら良問の風までで十分に入試レベルの合格最低点を取ることができるようになります。良問の風は本当に良い問題が揃っています。
志望校が偏差値65〜70の大学なら、良問の風を終わらせたあとに名問の森か重要問題集など次のレベルの参考書までを完璧にすることが必要になります。
物理は特にハイレベル参考書の取り扱い注意
名問の森や重要問題集は難関大学合格者から非常に評価の高い参考書ですが、とっても難しい参考書なので要注意です。これらの参考書を始める目安として、センター過去問や共通テストレベルで70点が安定してから始めるようにしたいです。
難しすぎてミスマッチしてしまう例が多発しているんです。スマブラでいえば反転空後ができないのにVIPで勝てると思っているくらい、ステップを飛び越えている。
余計なおせっかいかもしれませんが、ここで失敗しちゃう受験生が多いんです。だからこそ、自分の今の実力を軸に参考書を選べるように意識してみるといいかもしれません。
ここまで漆原の物理を解体して、どんな受験生がどう使うかを詳説してきました。
今回は1冊の参考書にフォーカスして分解しましたが、もう一段上の視点から、物理で大学入試を成功させるための考え方や勉強法をご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
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現在はWebサイトやYoutubeなどのメディア運営と、オンラインの面談で受験生の独学を支援。東京都や神奈川県、埼玉県、千葉県など首都圏を中心に、愛知県や兵庫県など、北海道から沖縄まで全国の受験生が独学で合格している。
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イクスタとはYouflex株式会社の土井万智(どいまさと)がほぼ1人で運営する、はじめての大学受験を成功させるためのプラットフォームです。普通に予備校にいって普通に勉強するだけでは難関大学に合格できないという現実を、どう打破するか。第一志望に合格する15%に入るためには、どう違いを作るか。毎年、1年間一人一人の受験生に毎週の面談で密着すると、実際の事実と世間で理解されている情報の乖離がある。このビジョンをもとに、Webの記事、Youtube動画、書籍、オンラインコーチングという4つの柱で独学の受験生を支援します。