2015年 センター試験数学ⅠA 解説と講評

第1問 二次関数

例年とは異なり、2次関数に関する問題。難易度としては比較的平易といえるため、ここで失点してしまうのはもったいない。以下で問題ごとに講評を記す。
[ ア ][ イ ]については基本中の基本となる問題。ここは間違えてはならない。
[ ウ ]から後は、二次関数の平行移動と二次不等式の解の範囲の複合問題となっている。この問題では何よりもまず、f(x)をp、qを用いて表すことが必要である。与えられた条件から、f(x)はf(x)=〖-{x-(1+p)}〗^2+3+qとかける。センター試験で数学を使うのであればこの程度のことは知っておきたい。f(x)が上に凸であることに注意すれば[ ウ ]~[ カ ]まではたやすく求まるはず。ここらへんで間違えてしまった場合は演習不足といえる。
後半については、「2次不等式f(x)の解が-2<x<3」より、「f(x)の式は2次不等式
a(x+2)(x-3)<0 (aは正の定数)」で表されるという風に考えられればいい。今回はx^2の係数から考えてa=1とわかり、そうすると後は平方完成をして答えが得られる。

第2問 命題と論理・平面図形

 [1] 命題と論理
 [2] 平面図形
  からの出題。まずは[1]から講評を始める。

 [1] 命題と論理
 センター試験で出題されるこの分野の問題は、例年状況が複雑で解答するには時間のかかるものであった。しかし今年に関しては、設問は2つで、しかも前者については基本的な問題であった。
 一般にこの分野の問題は難しいとされることが多いが、その理由として挙げられるのはやはり「条件が式で書いてあること」であろう。確かに普段見慣れないかたちで条件が書かれているので考えづらいという部分はある。このような問題でやるべきことといえばやはり、「条件(何を言っているのか)を掴むこと」である。センター試験で出題される範囲では難しい記号は使われないので、結局は式にされていることを日本語にすることさえできればよい。今回の問題では、(1)は基本的な部分であり、ここで間違えることは避けたい。(2)では「p_1 かつ〖 p〗_2⇒(q_1 ) ̅かつq_2 」とは「nも n+2も素数である⇒n+1は5の倍数でなく 6の倍数である」ということである。具体的にはn=2,3,5,11,17,29の6通りについて調べればいい。

[2] 平面図形
 センター試験における平面図形の問題は、例年前半は正弦定理や余弦定理をしっかり使えれば解ける基本的な問題で、後半は状況が複雑になり比較的難しい問題であった。この傾向は今年にも当てはまる。
今回でいえば sin∠BCA までは求めておきたい。後半のRの値域を求める問題についてだが、見落としてはいけないのは「∠ADC が鋭角」という条件。この条件により点Dは線分BCをBの方向に延長した位置にある。このように、センター試験では「与えられた条件を正しく認識する」ことを罠にする問題を出題してくることがある。これは何も数学に限ることではないが、問題文をしっかり読むということは問題を解く上での前提である。見落としの内容にしよう。このことができていれば、Rの値域は点Pが線分BDの端にあるときを考えればいいということがすぐにわかり、必要な辺の長さを適宜調べることでRの値域が求まる。この問題は例年の出題に比べ難しくないため正解しておきたい問題であった。

第3問 資料と統計

新課程により新しく導入された資料と統計に関する出題。新課程で新しく追加された分野だが、今年の出題を見てみると「用語の意味を理解していれば解ける」設問が多かった。当然だが分からない単語などあってはならない。用語の定義はしっかりと覚えておこう。
 単語の意味がしっかりと押さえられていれば、あとは慎重に分析することと、計算ミスをしないだけである。新課程初年度だからかどうかは分からないが、簡単な出題であったといえる。

第4問 場合の数

場合の数に関する問題。隣合わないように色を塗り分けていく問題で、普通は演習しておかないと解きづらい問題だが、今年に関しては例年に比べ難しくなかったといえるだろう。
 前半に関しては基本的な問題のため、確実に得点しておきたい。また、後半に関しても、今回はあまり時間をとらずに解ける問題であるため、できれば得点しておきたい。
 
 (5)で注意しておきたいのは、「今回は対称がない」ということ。つまり[キ]では、例えば左側に赤色がくるとしたら、その場合の数を2倍したものが答えになる。(左端が赤色に塗られる場合の数は2通り) [クケ]についても同様に気を付ける必要がある。
 また、(6)を解く上では、まず赤色に塗る正方形の配置が6通りあることに気を付けたい。対称性も考えれば計算量はある程度減らせる。うまく計算して手早く正解に至りたい。
センター試験で出題される確率、場合の数の問題は概して後半の状況が複雑になる。今回でいう対称性のような工夫がうまく見つけられればいいが、もし見つけられなかった場合は残り時間と相談しつつ泥臭くひたすら計算するのも1つの手である。

第5問 整数

 整数の分野からの出題。例年のセンター試験にはなかった新傾向の問題であり、後半にはユークリッドの互除法を用いる問題も出題されている。過去問にない分、個々人がどれほど演習を積んできたかが問われる結果となっただろう。とはいえ、前半部分の(1), (2)は演習の有無にかかわらず解けるようになっておきたい。
 正の約数の個数の求め方については、以下を参照。
ある自然数n が、
n=2^(p_1 ) 3^(p_2 ) 5^(p_3 )‥‥
と素因数分解できるとき、n の約数の個数は
(p_1+1)(p_2+1)(p_3+1)‥‥
となる。
ちなみに、n の約数の総和は
∑_(i=1)^(p_1)▒2^(i-1) ∑_(j=1)^(p_2)▒3^(j-1) ∑_(k=1)^(p_3)▒5^(k-1) ‥‥
で求められる。これらのことは押さえておきたい。
(2)では、自然数の平方根が自然数になるとき、元の自然数を素因数分解すると、そのすべての素因数は偶数個ずつ含まれている。このことよりm が容易に求まる。
(3)は次のように考えることができる。(クケコ→126)

与式より、
126k=11×11k+5k=11l+1
右辺は11で割って1余る数だから、左辺も11で割って1余る数。よって、5k が11で割って1余るような最小のkを求めればよい。
具体的に調べると、k¬=9 が適するとわかる。

整数では以上のように余りに気を付けるとよいことがある。
また、(4)については難問で、今までの流れを把握できていないと正答に至りづらい。(4)までの設問の流れをを丁寧に追ってみると、
・√am が自然数となるとき、m=21k^2
・126k(=√am) を11で割った余りが1となる最小のkは9
となる。よって、m=21×81=1701となる。
 状況が複雑になり混乱してきたときは、それまでの流れを整理してみるとよい。

第6問 平面図形

平面図形から2回目の出題。第2問[2]だけでは不足ということなのだろうか。
 2回目ということもあり、最初から難易度は少し高め。最初の設問ではまず方べきの定理を使う。次の重心に関わる設問では、重心の性質を知っていたかどうかで正解できたかどうかが決まるだろう。以後の設問においても三角形の相似やメネラウスの定理を用いて解答するものとなっており、気付けたかどうかで正解できたか決まる部分も大きかった。
 平面図形の問題では総じて用いる定理が多く(正弦定理や余弦定理に始まり、チェバの定理やメネラウスの定理、中線定理など)、この分野の問題で正解を出すためにはまずこれらの定理をしっかりとおぼえる必要がある。また、問題を解く上では常に「あの定理が使えないだろうか」「相似や合同が潜んでいないだろうか」と、視野を広く保つことを意識しておこう。今回の問題では、三角形の形からメネラウスの定理を用いるという発想さえ出てくれば、相似については問題文のヒントの与え方から気付けたのではないだろうか。

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